「余命4年」私の人生

明日やろうはバカやろう!

★「自己啓発本」を読んだが、行動や実践に移せない悩み

 

「仕事を辞めたい!」

上越新幹線の中で、ため息をつく

 仕事でミスばかりする「ダメ社員」の28歳の私。

 

しかし、会社を辞める勇気はない。

まさに、人生の断崖絶壁に立っていた。

 

「自分を変えたい!」

 

と『ビジネス本』や『自己啓発本』を何冊も読み漁る日々。

 

読書中や完読した後は

「やるぞ!やるぞ!やるぞ!」と高揚感はMAX!

 

でも、結局、最初の一歩が踏み出せない...

どうしたら、読書で学んだ知識やノウハウを行動に移すことが出来るのか?

 

新幹線の中でため息をつく私に、隣席の人が話しかけてきた。

「みかんでもどうだい」

人と会話するような気分じゃない。

ましてや、知らない人なんてとても無理...

 

でも、みかんをもらったことだし、

気弱な私は、会話に付き合うことにしました。

 

仕事のミスで飛ばされ、初めての地方暮らし。

明日から新潟の営業所へ赴任せねばならぬこと云々を手短に話しました。

 

この人、すごく聞き上手で、ついつい身の上話をしてしまうんですね。

包容力があるというか...

 

50歳前半に見えるその人は、新潟で教員をしているとか。

 

(ああ。なるほど。生徒さんの悩みとか進路相談を受けたりするのが本職だもんな)と、私は妙に納得ちゃったわけです。

 

新潟県は「上越」「中越」「下越」のエリアに分かれていること。

その教員氏は、県内諸々と転勤したから

新潟のことならなんでも聞いてくれ!とか。

学校の裏話など、とってもユーモラスに体験談を語ってくたりもしました。

 

(きっと、私の悩みや不安を少しでもやわらげ、元気づけてくれてるんだな)

 

新潟の人は心があたたかいな。そうなんだ。

と、明るい希望の光が心に灯ったような感じでした。

 

みかんがビールとなり、さらに心が打ち解けつつ会話が弾ずみます。

そして、ビールが日本酒に・・・

その教員氏の目が据わり始めました。

 

それから永遠に続くお説教?と、いかに雪国新潟の生活が厳しいかということをとうとうと語り続けるのです。

 

私の席は、3列シートの窓側。

逃げるに逃げられないポジションです。

 

車窓に大観音様現れ、観音様を拝みつつ話を聞かされていたので、

高崎駅を過ぎ、少し走ってからだったと思います。

教員氏がトイレに立ちました。

 

(逃げるなら今だ!)

 

私は席を立とうとした瞬間、力を失ってしまいました。

トンネル走行中、薄暗い鏡のようになった窓に、辛く、せつない自分の顔が映し出されていたからです。

まるで、私の卑屈な人生を映し出す鏡のようでした。過去、現在、未来も...

 

(列車の席からも逃げなくてはならないのか?

自分の指定席からも・・・)

  

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」

川端康成『雪国』の冒頭が浮かぶ「白一色の世界」が車窓に広がります。

 

数分前は、空っ風吹く上州の青空が一瞬にして雪国。

私には人生「ハレの日」は一度もなかったな。

 

そして、暗い暗いトンネルを抜け、

さらに、奈落の底に落ちていく・・・

 

雪の中に埋もれつぶされる人生が待っているのだろうよ。

 

当時の私は、何を見ても、何を体験してもネガティブに感じとってしまう残念な人だったのです。

 

「仕事を辞めたい!」

上越新幹線で絶望している当時の私を、今の私なら救えます!

 ああ、タイムマシンがあれば伝えたい。

 

『ビジネス本』や『自己啓発本』で学んだ知識やノウハウを

実践方法を!

 

そして、君が、その方法を実践した結果、

想像も出来ない程の天地がひっくり返るほどの

体に電撃が走るような嬉しい体験や仕事をすることになるよ!と。

 

逆に、誹謗中傷されたり、辛酸を嘗める体験を乗り越えなくてはならぬが...

  

いつの間にか教員氏の姿はなかった。

 

(ポケットが重いな)

 

教員氏がお土産にくれたワンカップの酒だった。

「菊水」という辛口の新潟の地酒だという・・・

 

(辛口かぁ・・・)

 

初対面の私に辛辣な言葉を浴びせて消えた教員氏。

「やりたいこと」があれば「やりたくないことをやるな!」

 

意味不明だが、なぜか気になる言葉のような...